ビル・マンション解体の「全層同時解体工法(地上解体)」とは?安全性・メリット・デメリット、適正費用を専門家が解説

独自のノウハウにより安心・安全そしてリーズナブルに解体サービスを提供する、ピタットハウス浦和西口店・恵比寿店を運営する株式会社エスエイアシストがお届けする解体コラム、今回は、中層ビルの解体で主流となっている「全層同時解体工法(地上解体工法)」についてです。
都市部の再開発や老朽化したマンションの建て替えが進む中、解体工事の効率化は大きな課題です。その中で、多くの現場で採用されているのがこの工法です。本記事では、仕組みや選ばれる理由、気になる費用、そして見落としがちなデメリットや安全性について、専門的な知見から詳しく解説します。
もくじ
全層同時解体工法(地上解体)とは?
「全層同時解体工法」とは、一般的に「地上解体工法」を指すことが多く、地上に設置した大型重機を用いて、届く範囲の階層を効率的に解体していく手法です。
※一部の高度な技術では、上層から下層まで複数フロアを同時に解体するシステムを指す場合もありますが、一般的なマンション解体においては「地上からのアプローチ」を主体とした工法(ロングブーム工法等)として認識されています。
主なパターンは以下の2つです。
1.ロングブームによる地上解体
超大型の解体専用重機(ロングブーム)を地上に設置し、最上階までアームを伸ばして解体していく方法です。10階〜15階建て程度の建物(高さ約40〜50m)まで対応可能です。
2.階上解体とのハイブリッド
高層階をクレーンで揚重した小型重機で解体し、地上からのアームが届く高さになった段階で地上解体に切り替える手法です。これを組み合わせて効率化を図るケースも「広義の全層解体」に含まれることがあります。
全層同時解体工法のメリット
この工法が選ばれる最大の理由は「スピード」と「コスト」のバランスの良さにあります。
① 大幅な工期の短縮
地上から大型重機でダイナミックに解体するため、重機を屋上に揚げる揚重作業や、床の補強といった事前準備が最小限で済みます。これにより、階上解体などの他工法に比べて圧倒的なスピードで作業を進められます。
② 解体費用の抑制
工期の短縮は、人件費や機材リース代の削減に直結します。また、建物を内側から支える補強(支保工)などの仮設費用も抑えられるため、トータルのコストパフォーマンスが非常に高いのが特徴です。
③ 強固な構造にも対応できるパワー
人力や小型重機では時間がかかる強固なRC(鉄筋コンクリート)やSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)構造でも、大型クラッシャー(圧砕機)を使用すれば、効率よく確実に粉砕・切断が可能です。
全層同時解体工法のデメリットと注意点
メリットが多い反面、特有の制限やリスクも存在します。これらを正しく理解しておくことがトラブル回避に繋がります。
1.敷地面積・前面道路の制約
大型重機を据え置くための広い作業スペースが必要です。敷地が狭いビル街や、前面道路が細く大型車両が進入できない場所では採用できないことがあります。重機の搬入・搬出ルートの確保も大きな課題となります。
2.騒音・振動・粉塵への配慮
大型機を使用するため、小型機に比べて周辺への影響が出やすくなります。近隣住民への丁寧な説明と、徹底した散水、防音シート(パネル養生)の設置といった対策が不可欠です。
3.建物高さの限界
地上から届く範囲(約40〜50m)を超えると、別の工法(上部閉鎖式工法や階上解体など)への切り替えが必要です。無理にブームを伸ばすと強風の影響を受けやすくなるなどの安全リスクも高まります。
4.地盤への高い負荷
数十トンから百数十トンに及ぶ大型重機を設置するため、地盤に非常に高い圧力がかかります。地下室がある建物や地盤が緩い場所では、地盤補強や鉄板による荷重分散が不十分だと、重機の沈下や横転に繋がる恐れがあります。
5.空中制限(電線・看板)の影響
大型のアームを旋回させて作業するため、敷地上空に電線(架空線)や隣接建物の看板がある場合、接触のリスクが生じます。電力会社への防護管取り付け依頼や、緻密な旋回計画が必要です。
6.オペレーターの高度な習熟度が必要
ロングブーム重機の操作は非常に難易度が高く、重心移動を常に計算しながら作業しなければなりません。未熟な操作は建物の予期せぬ崩落を招く可能性があるため、業者選定では「実績」が極めて重要になります。
安全性への取り組み:事故を防ぐためのリスク管理
解体工事において「安全性」は最優先事項です。全層同時解体工法では、事故を未然に防ぐため、現場ごとに最適化された厳格な管理体制が敷かれています。
まず、大型重機の転倒を防ぐため、軟弱地盤や地下室がある場所では厚い鉄板を敷き詰め、荷重を適切に分散させます。作業中は常に重機の重心バランスを監視し、安定した足場を確保することが基本となります。また、高所作業に伴う落下物対策として、建物の高さに合わせた高層養生パネルを設置し、地上には監視員を常駐させて飛散リスクを徹底排除します。
さらに、工事着手前には経験豊富な施工管理技士が建物の強度を緻密に解析します。どこから解体すれば安定性を保てるかを導き出し、崩落リスクを排除した「施工計画書」を作成。現場ではこの手順を厳守することで、難易度の高い中高層ビルの解体においても高い安全性を維持しています。
適正費用の目安と見積もりの内訳
解体費用は、構造や立地により変動しますが、一般的な目安(坪単価)は以下の通りです。
| 建物種別 | 坪単価の目安 | 備考 |
| マンション(RC造) | 6万円 〜 10万円 | 階数やアスベストの有無で変動 |
| オフィスビル(SRC造) | 8万円 〜 12万円 | 鉄骨の含有量・処分費により変化 |
※近年の資材・人件費高騰により、以前より単価は上昇傾向にあります。
見積もりを左右する重要要素
・アスベスト(石綿)対策:2022年4月から「事前調査結果の報告義務化」、2023年10月より「有資格者による調査の義務化」が実施されています。含有している場合は、法令に基づいた除去費用が必要です。
・廃棄物処理費:廃材の分別を徹底することでコストを抑えられますが、処分場の状況や運搬距離により価格が変動します。
・付帯工事:浄化槽の撤去、庭木の伐採、万塀の解体など、建物本体以外の費用も確認が必要です。
信頼できる解体業者の選び方
「安さ」だけで業者を選んでしまうと、不法投棄や近隣トラブル、あるいは工事の中断といった予期せぬリスクを招き、結果的に追加費用が発生してしまうケースが少なくありません。
信頼できる業者を見極めるためには、まず建設業許可(解体工事業)や自治体への登録が適切になされているかを必ず確認しましょう。また、大型重機を自社で保有しているかどうかも重要な指標です。自社重機を持つ業者は、リース代がかからないため価格競争力があるだけでなく、その機械の操作に精通した熟練オペレーターが在籍している可能性が高く、精度の高い施工が期待できます。
さらに、近隣対策への姿勢も無視できません。現地調査時の受け答えが丁寧か、近隣挨拶の計画が具体的かなど、周辺環境への配慮が行き届いている業者を選ぶことが、トラブルのないスムーズな解体への近道となります。
まとめ
「全層同時解体工法(地上解体)」は、10階建て前後のマンションや中規模ビルにおいて、最も効率的でコストメリットの大きい工法の一つです。
しかし、騒音対策や敷地条件の確認、そして大型重機を扱うための高度な技術力など、事前の綿密な計画が欠かせません。解体をご検討の際は、実績豊富なプロによる「現地調査」を依頼し、所有されている物件に最適なプランを提案してもらいましょう。
私たちエスエイアシストでは、不動産解体業者として丁寧で綺麗、クレームのない解体・撤去工事に力を入れています。また、ピタットハウス浦和西口店・恵比寿店を運営しており、安心してご依頼いただけます。お悩みの方は、ぜひ一度エスエイアシストにご相談ください!お待ちしています。