認知症の親の実家は解体できる?成年後見制度・家族信託・2026年民法改正のポイントと進め方

独自のノウハウにより安心・安全、そしてリーズナブルな解体サービスを提供する、株式会社エスエイアシストがお届けする解体コラム。今回は、認知症の親が所有する実家の解体手続きや注意点について解説します。
「親が施設に入り、実家が空き家になった」「認知症が進んで、実家の管理が難しくなってきた」「庭木が伸び放題で、近所から苦情が来ている」。親が高齢になると、実家をどうするかという問題が、子世代に重くのしかかります。古くなった実家を解体して更地にしたい、あるいは売却のために解体したいと考えたとき、多くの方が最初にぶつかるのが「親が認知症だと、解体の手続きはどうなるのか」という壁です。
実は、親の家は子の判断だけでは解体できません。一方で、認知症と診断されたからといって、一律に何もできなくなるわけでもありません。本人の判断能力の状態に応じて、取れる選択肢は変わります。さらに成年後見制度を大きく見直す民法等の改正の動きも進んでいます。
この記事では、認知症の親を持つ子世代の方に向けて、実家を解体するための基本的な考え方、成年後見制度を使う場合の流れと注意点、法改正のポイント、判断能力があるうちにできる対策、放置するリスクまでを、解体の実務の立場から整理します。なお、法律や手続きの個別判断は、必ず弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。
子が「親の家」を勝手に解体することはできない
まず前提として、解体を依頼できるのは建物の所有者です。実家の名義が親であれば、解体工事の契約を結ぶ権限があるのは親本人であり、同居や介護をしてきた子であっても、当然に代わりに契約できるわけではありません。名義は法務局で登記事項証明書を取得すれば確認できます。祖父母や亡くなった親の名義のまま残っているケースや、きょうだいとの共有になっているケースも珍しくないため、最初に確認しておきましょう。
所有者の同意なく解体してしまうと、建物という財産を壊したことになり、損害賠償を求められたり、将来の相続でほかの相続人とトラブルになったりするおそれがあります。「どうせ誰も住まない家だから」という理由だけで進めるのは危険です。
認知症だと解体の契約はできない?カギは「意思能力」
認知症と診断されていても、直ちに契約ができなくなるわけではありません。ポイントになるのは意思能力、つまり契約の内容や結果を理解して判断できる能力が、その時点であるかどうかです。意思能力のない状態でした契約などの法律行為は無効になると民法に定められています。
軽度の認知症で、解体の目的や費用、家がなくなることを本人が理解し、自分の意思で決められるのであれば、本人が契約者となって進められる場合があります。その場合も、医師の診断書や意見書、家族が同席した説明の記録など、本人の意思確認の経過を残しておくと安心です。解体業者や司法書士の側も、本人確認と意思確認を慎重に行うのが通常です。
避けなければならないのは、子が親の名前で委任状を作ったり、署名・押印を代わりに行ったりすることです。本人が判断できない状態でこうした書類を作成すると、後で契約が無効と判断されるだけでなく、書類偽造などの重大な問題に発展するおそれがあります。
判断能力が低下している場合の選択肢:成年後見制度
成年後見制度の基本
本人の判断能力が不十分な場合は、家庭裁判所に申し立てて、本人に代わって財産の管理や契約を行う人を選んでもらう「成年後見制度」を利用できます。現行制度では、判断能力の程度に応じて後見・保佐・補助の3つの類型があります。申立ては本人の住所地を管轄する家庭裁判所に行い、本人の親族などが申し立てることができます。
居住用の不動産の解体には家庭裁判所の許可が必要
成年後見人が、本人が住んでいた建物やその敷地を売却したり、取り壊したりする場合には、家庭裁判所の許可が必要です(民法859条の3)。現に住んでいなくても、施設に入所する前に住んでいて、将来戻る可能性がある実家は、居住用の不動産として扱われることがあります。家庭裁判所は、本人にとって本当に必要な解体かどうかを判断します。老朽化で倒壊のおそれがある、売却資金を介護費用に充てる必要がある、といった事情を、資料を添えて説明することになります。
申立てから解体までの流れ
①医師の診断書の取得、必要書類の準備(戸籍、登記事項証明書、財産の資料など)
②家庭裁判所への後見等開始の申立て
③家庭裁判所による調査・審理と、後見人等の選任
④後見人による財産調査と、解体の必要性・費用・時期の検討
⑤居住用不動産の処分許可の申立てと、家庭裁判所の許可の審判
⑥解体業者との契約、解体工事の実施、建物滅失登記
申立てから後見人が選任されるまでに数か月かかることもあります。実家が老朽化して危険な状態であれば、並行して応急的な対応(立入禁止措置や、倒れそうな部分の補修など)も検討しておくとよいでしょう。
現行制度で知っておきたい注意点
・後見人は家庭裁判所が選ぶため、親族の希望どおりに選任されるとは限らず、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることがあります
・専門職が後見人になると、本人の財産から報酬が継続的に発生します
・現行制度では、解体や売却という目的を果たしても、原則として本人の判断能力が回復しない限り、制度を途中で終了できません
2026年成立の成年後見制度の改正:何が変わる?
こうした使いにくさを解消するため、2026年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」が成立し、6月24日に公布されました。成年後見制度が大きく見直される、制度開始から約25年で初めての大規模な見直しです。法務省の公表によれば、成年後見制度の見直しに係る部分は、公布の日から2年6か月を超えない範囲内で政令が定める日に施行されます。遅くとも2028年頃までには施行される見込みで、2026年10月時点ではまだ施行されていません。
主な改正の方向性は次のとおりです。
・「必要な範囲・期間」に応じた柔軟な支援構造への転換:
制度の枠組みを整理し、必要な範囲に限って代理権や同意権を付与する柔軟な仕組みになります。
・特定の行為に応じた利用:
不動産の売却や解体など、特定の課題解決だけを目的として、必要な期間・範囲で支援を受けやすくなります。
・「終われる後見」への転換:
目的を達成したなど、制度の利用が不要になった場合に、家庭裁判所の判断で制度を終了できるよう見直されます。
実家の売却や解体のために一時的に制度を使いたい、という家族にとっては、大きな見直しといえます。ただし、施行前の現在は従来の制度が適用されます。実家が危険な状態で急ぐ必要があるなら現行制度での対応を、時間に余裕があって本人の財産管理も落ち着いているなら、施行後の運用を見据えて待つ、といった判断もあり得ます。どちらが適切かは個別の事情で変わるため、専門家に相談してください。
判断能力が残っているうちにできる対策
認知症の診断が出た後は選べる手段が限られてしまうため、判断能力が十分なうちに備えておくことが、最も現実的で負担の少ない方法です。
・家族信託:親(委託者)が、信頼できる子(受託者)と契約を結び、不動産の管理・処分の権限を子に託す仕組み。契約で解体や売却を認めておけば、親が認知症になった後も、子が手続きを進められます
・任意後見契約:判断能力があるうちに、将来の後見人と支援内容をあらかじめ契約で決めておく制度。代理権の範囲に不動産の管理・処分を含めておきます
・生前の解体・売却:本人の意向を確認しながら、元気なうちに実家の整理を進める方法。家財の整理から始めると、家族の意見もそろいやすくなります
いずれも、親本人が理解し、納得して契約することが前提です。「認知症になる前に」と焦って家族だけで話を進めると、かえって親子関係を損ねてしまうこともあります。親の気持ちを聞きながら、元気なうちに家族会議を開いておくことをおすすめします。
実家を放置し続けるリスク
「手続きが大変だから、とりあえずそのままにしておこう」という判断には、見過ごせないリスクがあります。
・倒壊・火災・不審者の侵入:人が住まない家は劣化が早く、台風や地震で屋根材や外壁が飛散・倒壊すれば、通行人や近隣に被害を及ぼすおそれがあります
・固定資産税の負担増:空き家法の改正(2023年12月施行)により、放置された空き家が「管理不全空家」や「特定空家」に指定され、勧告を受けると、住宅用地の固定資産税の軽減措置が外れることがあります。小規模住宅用地では税額が最大で約6倍になる場合もあります
・近隣トラブル:庭木や雑草の越境、害虫・害獣の発生、ごみの不法投棄など、近隣からの苦情につながります
・売却・活用の機会損失:劣化が進むほど、売却時の評価が下がり、解体費用もかさむ傾向があります
自治体によっては、老朽化した空き家の除却に対する補助金制度があります。申請は着工前が原則のため、解体を決める前に、市区町村の空き家対策窓口に確認してください。
解体を進める前に、家族で話し合っておきたいこと
・きょうだいの合意:解体や売却は、将来の相続にも関わります。事前に全員の考えを共有しておくと、後のトラブルを防げます
・本人の気持ち:実家は親にとって、思い出が詰まった大切な場所です。本人の気持ちを尊重し、できる範囲で意向を聞き取りましょう
・家財・貴重品の整理:通帳、印鑑、権利証、位牌、写真、アルバムなど、重要な物を先に確認して取り出します。残された荷物(残置物)の処分は、解体前に整理しておく必要があります
・費用の支払い方法:親の預貯金から費用を支払うには、本人の同意や、後見人などの正当な権限が必要です。子が立て替える場合は、後で精算の根拠が分かるように記録を残します
・将来の相続登記:親が亡くなった後に実家を相続したときは、2024年4月から相続登記が義務化されています。相続を知った日から3年以内の登記が必要です
解体業者に最初に伝えておきたいこと
解体業者に相談するときは、建物の名義人、親の判断能力の状況(成年後見の利用予定や申立て中かどうか)、実家の状態(空き家になってからの期間、荷物の量)、解体後の予定(売却か駐車場か)を最初に伝えましょう。後見人が選ばれている場合は、後見人が契約の当事者となり、家庭裁判所の許可を得たことを示す書類が必要になることもあります。書類の準備には時間がかかるため、解体業者と司法書士・弁護士が連携して進められると、手続きがスムーズです。
まとめ
認知症の親の実家を解体するときは、まず建物の名義を確認し、親の判断能力がどの程度残っているかを見極めることが出発点です。判断能力が十分なうちは家族信託などで備え、低下している場合は成年後見制度を使って家庭裁判所の許可を得る。2026年に改正法が成立しましたが、施行前は現行制度で進めることになります。放置すれば、倒壊のリスクや税負担の増加につながるため、「先延ばしにしない」ことも大切です。
私たち株式会社エスエイアシストは、解体工事だけでなく、不動産売却や土地活用のご相談にも対応しています。
・建物調査を踏まえた解体・リノベ判断
・更地化した場合の土地活用提案
・現況売却や買取のご相談対応
など、状況に応じた選択肢をご提案しています。
これまでも様々な物件に関するご相談を数多く対応してきた実績がありますので、解体・撤去工事などでお悩みの方は、ぜひ一度エスエイアシストへご相談ください。
弊社は「ピタットハウス浦和西口店・恵比寿店」としての営業を2026年7月をもって終了し、
「【エスエイアシスト本店(浦和)/東京支店(池袋)】」としてリニューアル営業しております。
過去のブログ内に旧店舗名の表記が残っている箇所がございますが、スタッフや運営会社等に変更はございません。
これまで以上に皆様のニーズに寄り添った不動産・解体サポートに努めてまいります。