株式会社エスエイアシスト

解体工事前に確認したい「越境」問題|隣地の枝・擁壁・ブロック塀と改正民法のポイント

独自のノウハウにより安心・安全、そしてリーズナブルな解体サービスを提供する、株式会社エスエイアシストがお届けする解体コラム。今回は、解体工事前に必ず確認しておきたい「越境」トラブルや隣地関係、2023年4月施行の改正民法のポイントについて詳しく解説します。

解体工事は、建物の中でも最も隣地との距離が近い場所で行う工事です。重機や足場を使い、粉塵や振動が発生し、場合によっては隣地に入って作業する必要もあります。だからこそ、着工前に境界や越境の問題を整理しておかないと、「隣の家との関係がこじれた」「工事が止まってしまった」という事態になりかねません。

越境とは、隣地から枝や根、塀や擁壁、庇(ひさし)や配管などが境界線を越えてはみ出している状態のことです。解体の相談の現場では、「解体したら、隣の木の枝が屋根に当たっていた」「古い擁壁が境界のどちら側にあるのか分からない」「ブロック塀を壊したら、隣家が土砂崩れを心配している」といった声をよく耳にします。

この記事では、解体工事を検討している施主の方や、売却・相続・空き家対策に関わる士業の方に向けて、解体前に確認したい越境の種類、2023年4月施行の改正民法で変わった枝の切取りルールと隣地使用権、擁壁・ブロック塀を扱うときの注意点、トラブルを防ぐ進め方を解説します。

解体前に確認したい「越境」の種類

越境には、「隣地から自分の土地へ」はみ出してくるものと、「自分の土地から隣地へ」はみ出しているものの2つの方向があります。解体では、どちらも確認が必要です。

越境の対象具体例解体で問題になる場面
樹木の枝・根隣地の庭木の枝が屋根や敷地に伸びている重機の旋回や足場の設置の妨げになる、屋根の解体時に接触する
建物の一部庇、雨樋、エアコンの室外機、換気ダクト解体時に隣地側へ立ち入る必要が出る、取り外しの同意が必要になる
塀・擁壁・基礎ブロック塀や擁壁が境界をまたいでいるどこまでを撤去してよいのか、所有者がどちらか分からない
配管・配線給排水管や電線、ガス管が隣地を通っている解体前に引き込みの切り回しが必要になる、ライフラインの停止に影響する
境界標境界杭・境界プレートの欠損・移動解体後に境界が分からなくなる、後日の紛争の原因になる

解体を決めたら、まず登記事項証明書、公図、地積測量図、過去の売買時の資料などを集め、境界標の現地確認を行います。境界があいまいなときは、土地家屋調査士に境界確認や測量を依頼するのが確実です。過去に隣地との間で越境を認め合う覚書(越境に関する合意書)が交わされているかどうかも、事前に確認しておくとトラブル防止に大きく役立ちます。

【改正民法】越境した枝の切取りルールはこう変わった

2023年4月1日に施行された改正民法により、越境した竹木の枝の切取りルールが変わりました。それまでは、隣の土地から境界を越えて枝が伸びてきても、枝の所有者に切ってもらうか、裁判を起こして切除を命じる判決を得て強制執行の手続きをとる必要があり、越境された側が自分で切ることはできませんでした。

改正後(民法233条)は、「竹木の所有者に枝を切らせる」という原則を維持しつつ、次のいずれかの要件を満たす場合には、越境された土地の所有者が自ら枝を切り取れるようになりました。

1.竹木の所有者に越境した枝を切除するよう催告したが、相当の期間内に切除されないとき
2.竹木の所有者を知ることができない、またはその所在を知ることができないとき
3.急迫の事情があるとき

「相当の期間」とは、枝を切るために必要な猶予を与える趣旨で、事案によりますが、基本的には実務上は2週間程度と考えられています。また、竹木が複数人の共有物である場合は、各共有者が越境している枝を切り取れるようになりました。越境した根については、従前から、越境された土地の所有者が自分で切り取れます。

解体工事の観点では、「着工までに猶予がない」「所有者に連絡がつかない」という場面で、改正ルールが役立ちます。ただし、手順を踏まずに切ってしまったり、必要以上に切り過ぎたりすれば、隣人との深刻なトラブルに発展しかねません。催告は書面(内容証明郵便など)で行って記録を残し、法的に切除できるかどうかは、事前に専門家へ確認することをおすすめします。なお、隣地の所有者は、法務局で登記事項証明書(有料)を取得すれば調べられます。

隣地使用権:解体のために隣地に入るには

建物が境界に近接している場合、足場の設置や外壁の解体のために、隣地へ立ち入らなければならないことがあります。改正民法209条は、境界またはその付近で、障壁、建物その他の工作物を築造、収去(解体)、修繕するために必要な範囲内で、隣地を使用できる権利(隣地使用権)を明確に定めています。境界標の調査や測量、越境した枝の切取りのための使用も認められています。

ただし、無制限に使えるわけではありません。主なルールは次のとおりです。

・使用の日時、場所、方法は、隣地の所有者や使用者にとって損害が最も少ないものを選ぶ
・あらかじめ、使用の目的、日時、場所、方法を隣地の所有者(隣地を使用している人がいればその人にも)へ通知する。通知から使用までは、通常2週間程度の合理的な期間を置くことが目安とされている
・住居(住家)に立ち入るには、居住者の承諾が必要
・隣地の所有者や使用者に損害が生じた場合は、償金の支払いなどが必要になる場合がある

つまり、隣家の協力が得られないときも、一定の手順を踏めば工事を進められる可能性があります。しかし、実際の現場においては、事前の丁寧な説明と書面での同意があるほうが工事は格段にスムーズに進みます。解体業者に任せきりにせず、施主様ご自身も挨拶に同行するなど、良好な近隣関係づくりを心がけましょう。

擁壁・ブロック塀を解体するときの注意点

擁壁は「壊す」より「支える」視点が必要

擁壁は、高低差のある土地で土砂が崩れないように支える構造物です。解体や撤去では、擁壁が支えている土の圧力(土圧)が解放されるため、隣地や道路側の地盤が崩れる危険があります。とくに隣地のほうが高い場合は、擁壁を撤去すると隣家の敷地が崩れるおそれがあるため、土留めなどの対策を講じたうえで、段階的に進める必要があります。隣地側の安全に配慮するだけでなく、解体後の土地の高低差をどう処理するかを、土木の専門家とも相談して計画しましょう。

高さ2mを超える擁壁と法令の確認

高さが2mを超える擁壁は、築造時に建築基準法上の確認申請が必要になる工作物です。また、宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)の規制区域では、擁壁等を除却する工事に届出が求められる場合があります。自治体によって取り扱いが異なるため、工事前に市区町村の建築指導課や開発指導課などに確認してください。古い擁壁は、現行の基準に適合しない不適格擁壁であることも多く、建て替えや再構築が難しいケースもあります。

ブロック塀は所有者と境界の確認から

境界上にあるブロック塀が、どちらの所有物か、あるいは共有物かによって、撤去の可否や費用負担が変わります。解体の際に塀を一緒に撤去したい場合は、隣地の所有者の同意を得て、撤去後のフェンス設置や費用の分担を、あらかじめ書面で合意しておくのが安全です。

自治体によっては、危険なブロック塀の撤去費用に対して助成制度を設けています。たとえば東京都内の区には、道路に面した高さ1.2m以上のブロック塀等の撤去に対し、長さに応じた助成を行っている例があります。ただし、建物の解体や土地の売却・整地に伴う撤去は助成対象外とされる場合もあるため、事前に自治体の防災・建築窓口へ条件を確認しておくことが大切です。

越境トラブルを防ぐ解体前の進め方

①境界・越境の状況を確認する(登記事項証明書、公図、測量図、境界標の現地確認)
②必要に応じて、土地家屋調査士に境界確認・測量を依頼する
③隣地の所有者・居住者を確認し、解体の概要(時期、期間、作業内容、足場の位置)を直接伝えて、挨拶・同意を得る
④越境物(枝、塀、擁壁、配管など)の取り扱いを整理し、合意内容は書面に残す
⑤解体業者に、越境物の撤去範囲、隣地側の養生、粉塵・騒音対策、損害が出たときの対応(請負業者賠償責任保険の加入など)を確認する
⑥着工前に、隣家の外壁やブロック塀の状態を写真で記録する(事前の現況確認)
⑦解体後は、境界標を確認・復元し、必要に応じて建物滅失登記などの手続きを進める

とくに、着工前の写真記録は重要です。工事の振動で隣家の壁にひびが入ったと主張されても、事前の状態が記録されていなければ、原因の切り分けが難しくなります。業者に依頼するだけでなく、施主側でも記録を保管しておくと安心です。

隣地の所有者が分からない・連絡がつかないとき

相続登記が長年放置されている土地や空き家では、「隣地の所有者が亡くなっており相続人が分からない」「所在不明で連絡が取れない」という事態が起こり得ます。

この場合、まずは法務局で登記事項証明書や住民票の除票などをたどり、所有者や相続人を調査します。それでも不明な場合は、自治体の空き家対策窓口や町内会などから情報を収集する方法もあります。本格的な相続人調査が必要な場合は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼するのがスムーズです。

また、2023年4月からは「所有者不明土地・建物管理制度」や「管理不全土地・建物管理制度」といった新制度も施行されており、裁判所に支配人(管理人)を選任してもらうことで、所有者不明の土地の管理や処分の手続きを進める選択肢も整えられています。

境界の位置そのものに争いがある場合は、法務局の専門官が申請に基づいて筆界(境界)の位置を特定する「筆界特定制度」を活用できます。裁判を起こすよりも短い期間と費用で境界を明らかにできるため、土地家屋調査士や司法書士へ相談してみるとよいでしょう。

売却・相続に関わる士業の方へ:解体前後で押さえたいポイント

売却を前提とした古家の解体や、相続した土地の整理では、越境の有無が取引条件や価格に直結します。重要事項説明で越境の状況を適切に伝える、売買契約で越境物の取扱いを合意しておく、解体後の更地で測量・境界確定を行う、といった対応が、後の紛争予防につながります。また、解体工事と測量・登記のスケジュールが前後すると、工事が止まったり、境界標が消えたりするおそれがあるため、士業と解体業者が最初から連携して工程を組むことが重要です。

まとめ

解体工事のトラブルの多くは、着工前の準備で防げます。越境している枝、塀、擁壁、配管を事前に洗い出し、改正民法で整理された枝の切取りルールや隣地使用権を踏まえ、必要な手順を踏む。擁壁のように安全性が絡むものは、専門家の意見を取り入れながら計画する。そして何より、隣地の方への丁寧な説明と、合意内容の書面化が、円滑な工事の土台になります。

私たち株式会社エスエイアシストは、解体工事だけでなく、不動産売却や土地活用のご相談にも対応しています。

・建物調査を踏まえた解体・リノベ判断
・更地化した場合の土地活用提案
・現況売却や買取のご相談対応
など、状況に応じた選択肢をご提案しています。

これまでも様々な物件に関するご相談を数多く対応してきた実績がありますので、解体・撤去工事などでお悩みの方は、ぜひ一度エスエイアシストへご相談ください。

 
 
弊社は「ピタットハウス浦和西口店・恵比寿店」としての営業を2026年7月をもって終了し、
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